早期胃癌について
その1
本日、女優の東ちづるさんが胃がんを患っていたことを公表されました。
胃がんは進行するまで自覚症状が無いのが普通です。
東さんは胃痛や貧血などの症状がきっかけで癌が発見されたましたが、そのような患者さんで完治できる幸運な方は、本当にごく一部です。
そのため、自分は胃の調子も良いし、ご飯もよく食べられるから、胃がんは心配しなくて良いと思われては大間違いです。
胃がんは日本人のがん死因で肺がん、大腸がんに次いで第3位となっており、とても身近な病気なのです。
症状の出ない胃癌をどうやって見つけたらいいのか?
答えは、胃癌検診を受けることです。
癌の発生の様式には二種類あります。
大腸がんのほとんどは、まずポリープと呼ばれる数ミリ~数十ミリの良性の病変が出来て、それが成長して癌になる(adenoma-carcinoma sequence)ので、ポリープが癌に変わるまで、数年余裕があります。そのため、数年に一度大腸内視鏡検査を受けておけば、良性のポリープのうちに治療を受けられます。
ところが胃がんのほとんどは、正常の粘膜にいきなり癌が出来ます(de novo cancer)。ですから、今年に胃内視鏡検査を受けて結果が大丈夫だった方も、この先毎年いつどんなタイミングで胃癌が出来てくるか予想がつかないので、非常に怖いのです。
ゆっくり大きくなるポリープと違い、癌は非常に進行が速いので、胃内視鏡で早期胃がんを見落としてしまうと、せっかく内視鏡治療で治ったはずの状態だったはずが、翌年検査した際には手術が必要な状態まで進行してしまっていたり、最悪の場合手術不能となってしまいます。
そのため、胃内視鏡検査は常に、本当に神経を使います。
ピロリ菌という言葉を聞いたことがありますか?
ピロリ菌は胃癌の原因の95~98%を占めると言われていまして、感染しているかどうかは自費診療で調べるか、胃カメラを受けた際に感染の疑いがあれば保険診療で調べることができます。
下の写真は当院での実際の患者さんの写真です。掲載の許可をいただいております。
こちらの患者さんの胃は、ピロリ菌が感染していて胃粘膜がゴツゴツしている状態(萎縮性胃炎)なので、非常に胃がんが出来やすく注意が必要です。
実は、すでにこの写真の中に、胃がんが写っています。
もう少し見つけやすくしてみましょう。
NBIという技術を使って、特殊なフィルターごしに撮影すると、このように胃癌の部分だけ茶色いシミのようにして浮かび上がってきます。
みなさん、どこか分かりましたか?
この段階で発見できれば、開腹手術は不要で、お腹に傷をつけることなく、胃内視鏡だけで治療できます。
但し、ここまで小さく平坦な病変だと、内視鏡専門医でも、少しでも気を抜けば見逃してしまいます。
経鼻内視鏡の太さが5~6mmなので、写真で比較すると、病変の大きさは4~5mmといったところでしょうか。
こちらの患者さんはこの日に癌を発見できたので、後日内視鏡治療を受けていただき無事、完治いたしました。
早期胃癌は、本当に見つけるのが難しく大変なのです。
この病変はまだかなり小さいので、仮に今回は見逃されてしまっていたとしても、1年後も胃内視鏡検査を受けていただければ、もう少し大きくはっきりしてきて見つかりますし、治療もまだまだ間に合うでしょう。
しかし仮に、次回胃内視鏡検査を受けられるのが3~4年後であったなら、かなり進行してしまい治療は間に合わないかもしれません。
ピロリ菌がいた患者さんは胃癌ができる危険性が高いので、全員に必ず毎年胃カメラを受けてほしいと口を酸っぱくして説明しています。
毎年内視鏡検査を受けてさえいただければ、余程のことが無い限り、治療可能な段階で胃がんを見つけることができます。
胃がんは抗がん剤が効きづらく、進行も本当に早いので、胃内視鏡か手術で完全に切除できる段階で発見することが、まず第一なのです。
下の写真が、胃癌の場所の答えです。
もしかしたら、一般の方には、これでも難しいと言われる方もいるかもしれません。