胃カメラ 病理結果集計
(2018~2023)
2023年度までに、当院で行った上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)での、生検の結果を集計しました。
胃内視鏡検査(年度) | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
進行食道癌 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 |
早期食道癌 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 |
食道異型上皮 | 2 | 5 | 2 | 7 | 12 | 11 |
食道平滑筋腫 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
好酸球性食道炎 | 0 | 0 | 2 | 4 | 2 | 4 |
進行胃癌 | 3 | 6 | 1 | 1 | 2 | 1 |
早期胃癌(腸型) | 0 | 1 | 2 | 7 | 5 | 3 |
早期胃癌(胃底腺型) | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
胃腺腫 | 0 | 3 | 2 | 3 | 4 | 5 |
胃内視鏡検査数 | 562 | 958 | 1056 | 1438 | 1817 | 2064 |
生検数 | 60 | 97 | 81 | 66 | 80 | 85 |
生検率 (%) | 10.7 | 10.1 | 7.7 | 4.6 | 4.4 | 4.1 |
生検有所見率(%) | 10.0 | 15.5 | 13.6 | 36.4 | 35.0 | 31.8 |
癌発見率(%) | 0.53 | 0.73 | 0.47 | 0.70 | 0.50 | 0.29 |
陽性反応適中度(PPV) | 5.00 | 7.22 | 6.17 | 15.15 | 11.25 | 7.06 |
昨年度は、「早期」食道癌が2名、「進行」胃癌が1名、「早期」胃癌が3名、当院で発見されました。
「進行」胃癌で見つかった1名の方も、手術の結果ステージⅠで、救命することができました。
「進行」と「早期」の違いは、「早期」と比べて「進行」は癌が転移している可能性が高い、という意味です。
「胃腺腫」とは、将来「胃癌」になる可能性が高い病変の事で、こちらも内視鏡治療の対象になります。
「早期」癌で見つかった方は、定期的に胃カメラで検診を受けられていた方がほとんどでした。
食道癌は早期で見つかるケースは珍しいのですが、最近当院では「進行」食道癌よりも「早期」食道癌の方の割合が増えており、皆さんが定期検査を心掛けておられる結果だと思います。
2023年は、岐阜県の胃癌検診補助事業(該当者が無料になる助成)の最終年ということもあり、検査数が大きく伸びました。
しかし検査数の伸びの割に、食道癌・胃癌の発見数はあまり増えませんでした。
以前は胃バリウム検査のみだった胃癌検診に、胃カメラの項目が追加されてから数年経過し、ようやく胃カメラを過去に一度も受けたことが無い方の割合が、大分減ってきたということでしょうか。
または、最近のピロリ菌陽性率低下、ピロリ菌除菌率の上昇の影響もあるかもしれません。
検診の精度ですが、生検率:11%以下、陽性反応的中率(PPV):5%以上、癌発見率:0.5%以上が理想とする報告があります。
2023年度の生検率は4.1%、PPVは7.06%でクリアしていましたが、癌発見率は0.29%で理想を下回りました。
胃癌の代わりに胃腺腫で発見される方が年々増えてきています。
胃腺腫は将来癌化する病変なので治療対象となりますが、これをカウントに加えれば癌発見率は0.53%ということになります。
胃癌は大腸癌と異なり、ほとんどが「de novo」発癌といって、腺腫という「前癌」病変の時期を経ずに、突然癌化することが多いです。
しかし、一部には大腸癌同様、「前癌」病変の胃腺腫から癌化するパターンもあります。
最近ではこのパターンが増えてきているということでしょうか。
これも、最近のピロリ菌陽性率の低下、ピロリ菌除菌率の上昇が、関係しているように思います。
開業をして、同じ施設で6年以上診療していると、地域の患者さんの消化管疾患の傾向の移り変わりを実感します。
最近ではますます好酸球食道炎の方が増えてきています。これも以前は珍しい疾患でした。
当院ではこれからも、時代の変化に合わせながら、地域の皆さんの健康の維持に力を注いでいきたいと思います。
過去に一度も胃カメラを受けたことが無い方はもちろん、過去に当院で胃カメラを受けた事のある方も、今年も是非、当院へ胃がん検診にお越しくださいね。